探訪 名ノンフィクション
07/09/2020 21:39:30, 本, 後藤 正治
によって 後藤 正治
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内容紹介柳田邦男『空白の天気図』、立花隆『田中角栄研究』……。一八の作品はいかに生まれたか。ノンフィクションの名手による名作案内内容(「BOOK」データベースより)立花隆『田中角栄研究』、D.ハルバースタム『ベスト&ブライテスト』…名作はいかにして生まれたのか。18の名作をたどる旅。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)後藤/正治 1946年京都市生まれ。ノンフィクション作家。『遠いリング』(岩波現代文庫)で第12回講談社ノンフィクション賞、『リターンマッチ』(文春文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞、『清冽』(中央公論新社)で第14回桑原武夫学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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「中央公論」誌上で2012年1月号から2013年5月の間に連載されたものに、加筆・修正し、書き下ろしの一章を加えた作品。併せて2013年6月同誌に掲載された、著者と沢木耕太郎の対談「鋭角と鈍角―ノンフィクションの方法論」を収録。オビの惹句には「18の名作をたどる旅」とあるが、著者は選択の基準を「これまで読んできた中でインパクトを受けた作品という一点を根拠に、恣意的に選んだ」としている(沢木耕太郎との対談中の発言およびあとがきより)。後藤正治は評者がもっとも敬愛するノンフィクション作家のひとりである。その後藤正治が他のノンフィクション作品をどう評するのかを非常な興味を持って読んだ。予想通りと言えば予想通りだったが、インパクトのある取り上げ方はしていないし、裏読み的な解釈をするわけでもなかった。しかし、限られたページの中、ノンフィクション作家後藤正治の視点から丁寧にそして誠実に作品が紹介されている。後藤正治ファンには堪らない一冊だと思う。前述のノンフィクション作家後藤正治の視点とは、言い換えれば作品の特長ということになる。評者が考える作品の特長はこうだ。後藤正治は、対象とする人物がどうしても触れて欲しくないというようなことは、自分の関心の範囲(言い換えれば作品の主題の範囲)になければ聴かない作家だ。触れて欲しくないということは、逆に言えば読者あるいは著者が非常に興味を持つことであるはずだが、著者はそこに触れなかったり、突っ込みを入れたりしない。たとえば、過去にマラソンの有森祐子を扱った『甦るロード(「奪われぬもの」収録)』で「(前略)彼女の私生活がメディアを賑わせたが、ランナー有森裕子以外については私の関心を引かなかった」とし、作品中まったくそのことに触れなかった。また、本作での沢木耕太郎との対談でも「遠いリング」という作品において、興業としてのボクシング界の汚い部分を知りながらも触れなかった理由を簡潔に述べている。一般的にこういった作品は物足りなかったり奥行きが足りなかったりすることも多いが、後藤正治の作品はそうはならない。それは、後藤正治が優れた書き手である以前に優れた聴き手であるからなのだと思っている。後藤正治は取材も自分が主導権を握るのではなく、相手が自ら話し出すきっかけを探っていくというやり方をしてきた。この方法だと取材に非常に時間がかかるはずだが、そうして相手から発せられた言葉は生きたものになり、作品は地味でも非常に深みの読み応えのあるものとなる。そして、多少の突っ込み不足は関係ないものとしてしまうからなのだと思う。*ただ、近年発表の2作「奇跡の画家」「清冽」は、それぞれ理由は異なるものの物足りなさが残る作品だった。取り上げられた18の作品は次のとおり。()は単行本刊行年柳田邦男『空白の天気図(1975)』本田靖春『不当逮捕(1987)』澤地久枝『妻たちの二・二六事件(1972)』鎌田慧『逃げる民(1976)』G・オウエル 『カタロニア賛歌(1966)』立石泰則『覇者の誤算(1993)』沢木耕太郎『一瞬の夏(1981)』野村進『日本領サイパン島の一万日(2005)』田崎史郎『梶山静六死に顔に笑みをたたえて(2004)』小関智弘『春は鉄までが匂った(1979)』佐野眞一『カリスマ(1998)』D・ハルバースタム 『ベスト&ブライテスト(1976)』柳原和子『百万回の永訣(2005)』保坂正康『昭和陸軍の研究(1999)』最相葉月『星新一(2007)』大崎善生『聖の青春(2000)』河原理子『フランクル「夜と霧」への旅(2012)』(単行本書き下ろし)立花隆『田中角栄研究全記録(1976)』
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