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「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)

07/08/2020 02:28:33, , 藤沢 数希

によって 藤沢 数希
3.8 5つ星のうち 83 人の読者
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内容(「BOOK」データベースより) 3.11以降、原発を絶対悪と決め付け、その廃絶こそが「正義」という論調がマスコミでは吹き荒れている。しかし、この世にリスクのない技術は存在しない。原子力を代替するはずの「自然エネルギー」の実力のみならず、転換するリスクや懸念材料を冷静に見つめるべきではないだろうか。そんな感情論を超えた議論のために、原子力技術、放射線と健康被害、経済的影響を検討し、将来を見据えたエネルギー政策を提言する。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 藤沢/数希 欧米研究機関にて、計算科学、理論物理学の分野で博士号取得。その後、外資系投資銀行で市場予測、リスク管理、経済分析に従事しながら、言論サイト「アゴラ」に定期寄稿する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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原発の安全性・経済性を強調し、再生エネルギーの問題点を指摘して、むやみやたらに感情的な反原発運動に警鐘を鳴らす、という意図の本。2012年の発行で、発行以来6年が経過しているが、残念ながら著者の予測は大きく外れる結果となった。86ページで「何十年も前からある枯れた技術」と切り捨てられた太陽光発電だが、その後急速に低価格化・高性能化が進み、10パーセント台だった発電効率は各メーカー軒並み20パーセントを越えている。また、理論的には最大60パーセントの効率を実現できるセルも開発され、実験室レベルでは既に30パーセントを超えるものが実現している。この本では具体的な日本での発電量に対する太陽光発電の構成比は掲載されていないが、太陽光発電を含む再生エネルギーの全発電量に対する構成比は2009年時点で0.9パーセントだったものが2015年には4.7パーセントに伸びている。(この数値には、各家庭での自己消費量は含まれていない。)また、「有害物質を多数含む蓄電池」を使っている、と批判される家庭用蓄電ユニットだが、(78ページ)著者が大気汚染解消のため普及を推奨している「電気自動車」は(102ページ)、一台で、家庭用蓄電ユニットの3倍以上の蓄電池を使っているのだが、作者は知らないのだろうか?まさか、「家庭用蓄電ユニット用はだめだが、自動車用はOKです」とでも言うのだろうか?また、同78ページには、太陽光発電バネルには有害なカドミウムを使用したものがある、という記述があるが、2018年現在、少なくとも日本国内では、カドミウムを使用した太陽光バネルは発売されていない。(海外では発売されている国もある)著者は知らないのだろうか?一方、「コスト的には軽水炉に対抗できないが」(既に技術的には実現しているかの如き表現だ)「ウラン資源枯渇に対するワイルドカード」(159ページ)「すでにある技術」(195ページ)とされる高速増殖炉だが、世界でもっとも進んでいた実験炉「もんじゅ」は、運転開始以来25年間の悪戦苦闘の結果、「ナトリウム漏洩火災事故」「原子炉内への大型機器落下事故」などを起こし、技術的問題を解決できぬまま、2016年12月に廃炉が決定。(政府は、高速増殖炉の開発は継続する、としている。)残念ながら、商業用に使える見通しは立っていない。同194ページ以降には、「未来の技術」新型原子炉が色々と紹介されているが、報道の通り、米ウェスチングハウス社は事実上経営破綻、あおりをくらって日本の東芝もえらい事になっている。また、福島事故の処理で脚光をあびた仏アレヴァ社も、現在は経営再建中である。又、報道によると、膨大な建設コストを回収できる見込みが立たない原子力発電について、電力会社では、新規の原子力発電所の建設をためらう動きが出ているそうだ。また、121ページで著者は福島原発の損害額は、当時政府発表の賠償額4兆5000億円に「すぎない」としているが、2018年2月現在の東京電力の発表によれば、支払済の賠償金額だけですでに7兆8000億円となっている。また、事故の損害額は賠償額だけではなく、5000億円以上の建設費をかけた福島第一原発は使用不能で事実上全損、1兆円以上の建設費をかけた福島第二原発もあおりをくらって事実上使用不能となっている。この他、福島第一の廃炉関連費用が当初の2兆円程度から、現在では8兆円以上の見込みで、当初2兆5000億円の除染費用の見込みが4兆円以上となり、現在では福島第一の被害総額は21兆円以上の見込みとなっている。著者は、当時から発表されていた廃炉費用や除染費用は、事故の損害額に入らないとでも思っていたのだろうか?同じく123ページで、著者は電力会社が「原子力共同保険」のようなものを作らなかった事を責めているが、原発が最悪の事故を起こした場合の損害額に見合う保険、など引き受ける会社があるのだろうか?今回、関係者の懸命の努力で福島第一は今回程度の事故で収まったが、最悪の場合、東京を含む広大な地域が居住不能になる可能性もあったのである。仮に一カ所百兆円でかけたとして、日本全体の原発の保険対象額は2000兆円以上である。保険料だけで毎年数兆円となるだろうが、原発のコストにはこれが入っていないから、原価が安いのではないか。著者は153ページで「福島第一の事故原因は人為的ミス」としている。「津波に対応した設計をしていなかったのが原因で、これは設計ミス・人為ミス」だそうだ。福島第一に関しては、震災当時、地震に対する安全装置は正常に作動し、原発運転関係者の操作ミスはなかった。また、「世界一厳しい」とされていた、原発の当時の安全基準にも違反はしていなかった。ところが当時の想定を超えた自然災害が起こってしまい、大事故が発生した。つまり、安全基準自体が不十分だったという事が判明し、関係者はあわてて安全基準を見直し、各原発を改修して再審査することになった。この間、原発はほぼ停止していたわけだ。著者は161ページで、あたかも関係者が原発恐怖症になって原発を止めた、というような書き方をしているが、このへんの経過はご存知ないのだろうか?毎日毎日テレビ・新聞でバンバン報道されていた内容であるが。この新基準に合わせる為の改修費用が高くつく、というので、いくつかの原子炉は廃炉にする事を電力会社では決定した。「安い」というのはますます嘘ではないのか?著者は、93ページで、「家庭用電力は、電力全体の1/3」であると述べている。最近の太陽光発電・家庭用蓄電池のコストダウンによって、家庭で自家発電・蓄電・消費した場合のコストは、電力会社から電気を買う場合と比較しても、ほぼ同額程度にまでなっている。つまり、全家庭で太陽光発電・蓄電システムを導入すれば、電力の1/3はまかなえる状況になりつつある。(この先もっと安くなる見込みである。)著者は、84ページで自然エネルギーを既存の送電網につないだ場合の負荷について言及し、自然まかせでコントロールできない電源はだめ、としている。確かにメガソーラーが一挙に拡大した時期には、電力会社でも、「これ以上、送電網が対応できないので、買えない」と契約を断った時期もあった。しかし、自家生産・自家消費すれば、既存の送電網への負荷は全くない。著者は、82-83ページで「大きな電気を蓄える事のできる蓄電池はコストの点で作れない」と述べているが、確かに電力会社が使えるようなものは作れないだろう。しかし、各家庭で分散して設置すればよいだけの事である。コスト的にも問題はない。報道によると、各家庭にある蓄電装置・電気自動車の蓄電池を、数万の単位でコントロールし、電力の安定供給につなげるような実験がスタートしたそうだ。この本、さっと読むと騙されてしまうが、じっくり再読・再々読し、「おかしいな」と思った点をじっくり調べてみると、変な個所がいっぱいある。著者は頭の悪い人でも、知識のない人でもない。優秀な頭脳を持った方のようである。それでいて変な個所が一杯出てくるのは、結論をねじ曲げる為に、いたる所で故意にある事実を隠したり、データの中の都合の良い部分のみを抜き取って使ったりしているからだ。書いてある「事実」はほぼすべて本当の事なので、みなさん「ああ、そうなのか」と思ってしまうのである。原発について考えるきっかけとしては、中々面白い本である。今回、あっちを調べ、こっちを調べたりしたので、大変勉強になった。ブックオフの108円コーナーで買ったが、大変楽しめる本だった。

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