魔法昔話の研究 口承文芸学とは何か (講談社学術文庫)
07/04/2020 09:42:24, 本, V. プロップ
によって V. プロップ
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内容紹介 昔話、英雄叙事詩など口承文芸の本質とは? 昔話の構造、そして魔法昔話の起源を解明した口承文芸学の泰斗が、レヴィ=ストロースの批判に応え、「異常誕生」「笑わない王女」等を題材に方法論を解説する。 内容(「BOOK」データベースより) 『昔話の形態学』で世界に衝撃を与えたプロップ。その構造的研究、歴史的研究とはいかなるものか。レヴィ=ストロースへの反論のかたちで方法論を明快に示し、処女懐胎などの異常出生譚、「笑わない王女」の昔話、「オイディプス」の類話を題材に、民間伝承の構造と歴史的現実との関係を鮮やかに分析する。口承文芸の豊かな世界に誘う最適の入門書。 商品の説明をすべて表示する
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なにが、いかん、って、プロップは、こんな本を書いていない。日本でかってに作った中途半端な論文選集だ。もともとは13篇の論文が入った『口承文芸と現実』(1976)があり、そのうちの7篇だけをこの訳者が同じ書名で三弥井書店で78年に出した。それを講談社は、かってにタイトルを付けかえて09年に文庫化。学術文庫のくせに、編集者が傲慢で、商売っ気がありすぎる。この編集者は、プロップが『形態学』のときの翻訳書名改変に怒る第一章すら、自分で読んでいないらしい。だいいち、この論集の主題は、どう考えたって、魔法昔話なんかじゃない。表現に大きな揺らぎのある口承文芸というものだ。(魔法昔話については、他の2冊を読むべきだ。これは、その方法論。)中身は、彼の重要な三論文「口承文芸の特徴」「口承文芸と現実」「口承文芸の歴史性とその研究方法」が入っており、ナラトロジー研究者なら必読。その後にフランスで発展するバルトのような唯名論的構造主義以前の、ユンクやレヴィストロースにも共通するイデオロギー的(非フォルマリズム的)な古い構造主義を見ることができる。(もっとも、当時、レヴィストロースは、プロップをシロウト学者と勘違いして、フランスで好き勝手にけなしまくった。プロップの脇が甘かったとはいえ、レヴィストロースは、まったくイヤなやつだ。)口承文芸の難しいところは、これが原典だなどという絶対的テキストが存在しないこと。言わば、どれもがシミュラークル。ただ茫漠と民衆だけがいて、それがばらばらに語る。この方法的困難に対し、プロップは、作者の存在しえない口承文芸を、一つの言語や儀礼のようなもの、として捉える。だから、彼らは、ありえないファンタジーを現実のように語り、また、語らなければならない。そして、それこそが「歴史」であり、したがって国家より古い、とされる。プロップというと、その後の唯名論的な構造主義のナラトロジーから、たんにその先駆者としてレトロダクティブ(回顧的)に評価されがちだが、解釈学としてのプロップ自身の思想的な視野は、その後のナラトロジーなどより遙かに壮大だ。妙な通俗概説書を介すことなく、彼の思想に触れるとき、それは多くの示唆に富んでいる。
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